烏に単は似合わない(八咫烏シリーズ1・阿部智里)あらすじと感想

烏に単は似合わない あらすじ

「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」。

全ての八咫烏の長たる「金烏」を継ぐ、若き日嗣の御子の妃選びがはじまり、大貴族4家から選び抜かれた姫君たちが、次々と登殿してくる。

東家の姫・あせび、南家の姫・浜木綿、西家の姫・真赭の薄、北家の姫・白珠。

みな、若宮の后になるため、若宮に選ばれるために、表向きは穏やかながらも様々な思惑を隠し持ちながら「桜花宮」での日々を過ごしていくが・・・

なぜか一向に現れない若宮、その代わりになぜかちょこちょこ登場する若宮の近習、桜花宮ではあってはならない不穏な出来事・・・

4家の姫君たちの本当の思惑は何なのか、若宮はいったい何を考えているのか、そして、お后に選ばれるのは誰なのか・・・

阿部智里の「八咫烏シリーズ」、華々しくスタートする第1巻。

烏に単は似合わない 感想

若き御子の即位のためには、その后を決めねばならない。

娘が日嗣の御子に輿入れをするということは、次世代の権力を握ったも同然、ということで、4大貴族の姫君たちは、家の命運を背負って送り込まれてくる。

我こそは皇后にふさわしい、とそれぞれに個性的ながら美しい姫君たち、絢爛豪華は衣装、付き従うたくさんの侍女。

1人の皇子を巡っての女の争い、飛び交う牽制、皮肉の応酬、壮絶な足の引っ張り合い・・・

とこう書くと、「なんだ、よくある後宮ものではないか」と思われるだろうし、実際この物語は予想を裏切らず、少女漫画的に展開していくのですが・・・

でも、違うのです。

「烏に単は似合わない」は、単独で完結するひとつの物語ではあるのですが、この後に続く「八咫烏シリーズ」を通してみると、壮大な、長い長いプロローグみたいなものなのです。

なので「烏に単は似合わない」だけを読み、ちょっといまいちだな、よくある後宮もので新鮮味ないな、もっと期待していたのにな、などなどの感想を持った方、正直いると思うんですが、騙されたと思ってぜひ、次作「烏は主を選ばない」までは読んでみてほしいのです。

「烏は主を選ばない」は「烏に単は似合わない」と時間軸を同じくしたついになる物語です。

「烏は主を選ばない」を読んで初めて、八咫烏シリーズの本筋というか、本当の主人公が見えてきて、ばーっと世界が広がる感じがしてくるはず。

そういう意味でやっぱり、本書は長い物語の、プロローグ的な役割の物語なのです。

ではいっそ、物語の本筋とはあまり深く関わらない、プロローグに過ぎないのであれば飛ばしてしまって次から読み始めてしまえばいいのか、というと、それもちょっとお勧めできません。

八咫烏シリーズはいわゆるハイファンタジーしっかりした世界観の作り込みがあり、物語はその独自の世界の中で展開します。その世界観を共有するために、背景となる様々を読者に説明していく必要がどうしてもあるのです。

その説明パートを本作が一手に担っているといった感じです。

八咫烏シリーズは第1部が完結し、現在(2020年年10月)は第2部がスタートしたところ。

この後物語はかなり面白く展開していくので、本作「烏は単は似合わない」で手を離すことなく、ぜひとも物語の本筋、主人公たちの活躍までたどり着いてほしいです。

本作の登場人物の一部はその後の物語にも引き続き活躍しますが、それはおそらく予想外の人物です。

今後活躍するのは誰なのか、ということも含めて、ぜひ、お楽しみに!

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