鹿の王 水底の橋(上橋菜穂子) あらすじと感想

鹿の王 水底の橋 あらすじ

東乎瑠(ツオル)帝国を恐怖の嵐に叩き込んだ伝説的な病・黒狼熱(ミッツァル)の大流行の危機が過ぎ去った後、東乎瑠帝国では次なる皇帝の座を巡る争いが勃発していた。

若き天才医術士ホッサルとその恋人ミラルは、自らの施療院で患者の治療にあたっていたが、黒狼熱の治療の際に知り合った清心教の祭司医の真那に誘われて、真那の故郷である安房那領に出向くことに。

清心教医術の発祥の地である安房那領で、ホッサルたちは清心教医術の知られるざる歴史と秘密を知ることになるが、同時に、時期皇帝候補者の暗殺未遂事件にも巻き込まれて行って・・・

信仰とは、真に人を救うとはどういうことなのか・・・

医療と政治、しがらみや慣習の中で、医術師は己の信念をもとに闘っていく。

鹿の王」に続く、ほんの少し先の物語

鹿の王 水底の橋 感想

ピユイカ乗りのヴァンと天才医術師、未知の病をめぐる物語が全4巻で展開された「鹿の王」の続編が出た、ということで勢いこんで読み始めてしばらくして、はたと気づきました

この物語はたしかに、「鹿の王」から数年後の物語で、世界観や時間軸を引き継ぎ登場人物を引き継いでいますが、位置付けとしては外伝、スピンオフ的な物語です

ピユイカ、まったくもって出てきませんし、ピユイカ乗りのヴァンも、その養い子のユナも。

森の奥に消えていった彼らがその後どうなったのか、が気になっている方は多いかと思いますが、この物語に彼らについてはほぼ一切出てきません。

この物語は、若き天才医術師ホッサル、その恋人ミラル、帝国の若き祭司医・真那を軸として進んでいきます。

「鹿の王」が未知の病との戦いを描いた物語であるのに対し、「鹿の王 水底の橋」は、医術士たちのしがらみ、文化や信仰との戦いの物語といえます。

上橋菜穂子さんの文章は決して難解ではありませんが、独自の単語や当て字が多数使われるため、慣れるまではすっと物語に入り込めないかもしれません。

内容の薄い軽い文章というわけでもないので、サラサラと読み流せるようなものではないのです。

ただ、物語の推進力、吸引力が半端なく、気付けば最後まで走り抜けるように呼んでしまいました。

物語を読み終わった今、ひとこと言うとすれば・・・

「ホッサル!しっかりして!」

これにつきます(苦笑)

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