後宮に星は宿る(金椛国春秋1・篠原悠希) あらすじと感想

後宮に星は宿る(金椛国春秋1) あらすじ

大陸の強国・ 金椛(ジンファ)帝国。官僚一家の名門・星家の次男・遊圭は、ひとり、夜の闇の中を逃げ回っていた。

先の皇帝が崩御し、遊圭の叔母が皇后に選ばれたことで「皇帝に外戚なし」という族滅法によって一族の滅亡が決定、親族家族がみなつかまり、殉死していく中、遊圭はひとり逃げのびていた。

逃亡のさなか、以前たまたま助けたことのある町娘の明々(めいめい)にかくまわれ、何とか追っての目をくらませた遊圭だったが、その明々が後宮への出仕が決まってしまう。

他に行く当てのない遊圭が再び絶望しかけたところへ、明々は明るく言い放った。

「あんたも、一緒に来るといいのよ」

小柄で可愛らしい容姿を生かし、星家の生き残りでしかも少年であるという事実を隠して、遊圭は明々とともに後宮に乗り込んでいく。

果たして遊圭は、無事後宮で生き抜けるのか?

金椛国春秋シリーズ第1巻。

後宮に星は宿る(金椛国春秋1)  感想

この小説はライトノベルに当たるのだろうか…ちょっと違うような気がするけれど…でも最近多い感じがするな、こういうタイプの小説、と思って調べていたら行き当たりました。

どうやら、ライト文芸、という新しい分野のようです。

なるほどね、と思いました。

いわゆる文芸書というには、全体的な印象が軽い。かといってライトノベルとはちょっと一線を画したい。でも児童文学というくくりには納めたくない。

そんな、新たな枠組みとしてのライト文芸というわけ、です。

さて、本書「後宮に星は宿る」は、タイトルに「後宮」と入っていることからわかりますが、中華風ファンタジーです。

金椛国が中国大陸にあったどの王朝をモデルにしているのかは定かではありませんが、やはり後宮といえば中国、皇帝と妃賓と宦官のあの世界です。

この「金椛国春秋シリーズ」の興味深いところは、「皇帝に外戚なし」ということで、皇后に選ばれるとその一族はすべて殉死させられてしまう、という非常に極端な制度をとっているところです。

そのため、後宮に入ることは一族輔繁栄につながるが、皇后に選ばれると一族は滅ぶ、という極端な矛盾を抱えていて、それが数ある後宮を下敷きにした物語の中でも新鮮さを与えていると思います。

また、主人公は声変わりも前の可愛らしい少年とはいえ、 大胆にも後宮に潜入してしまう、という、とんでもなく危険な賭けに出ています。

それもこれもすでに身内は全滅、自分も見つかればすぐ処刑というバックグラウンドがあるからあり得るストーリーとなっています。

中華風ファンタジーというと、当ブログでも紹介している「後宮の烏シリーズ」や、もはや大御所翰の溢れる「十二国記」などありますが、その2作と比べると、この「金椛国春秋シリーズ」はやや軽く、明るめです。

シリーズは現在(2020年2月)6冊出ておりますが、1冊ずつはさほど分厚くなく、読みやすいうえ、展開も早いので、飽きずに読み進められそうです。

「後宮の烏シリーズ」のようにしっとりとした気分に浸る、「十二国記」のようにどっしりとした世界観に浸る、というよりは、小気味よいペースで進む物語追う、という楽しみ方かなと思います。

タイトルとURLをコピーしました