八月は冷たい城(恩田陸)あらすじと感想

八月は冷たい城 あらすじ

とある理由で、夏流城(かなしろ)での林間学校に集められた4人の少年。

同じ境遇の彼らは4人だけで、この夏のしばらくを子の城で過ごすことになる…しかし、到着早々、次々と不安な事件が起こっていく。

無残に刈り取られたひまわり、落ちてきた鎌、崩れ落ちる石像…

ここには4人きり、4人きりのはずなのに…他にも誰かがいるのか?

ここに少年たちが集められる本当の理由、「みどりおとこ」の正体、脈々と続けられてきたこの林間学校とはいったい何なのか・・・

土塀のむこうで、「七月に流れる花」と同時期に起きていた、夏と少年達の物語。

八月は冷たい城 感想:恩田陸氏お得意のスピーディーなホラー感を味わう物語

まず大切なことを1つ確認します。

この物語は、「七月に流れる花」と対になる物語であり、続編に当たります。

前提となる物語は基本的に「七月に流れる花」に書かれていますので、「八月は冷たい城」から読み始めてもおそらく分からないうえ、「七月に流れる花」のほうにとっては完全なネタバレとなります。

間違っても、こちらから読み始めないでください。

さて、改めて本作「八月は冷たい城」についてです。

「七月に流れる花」でどっぷりとノスタルジアの魔術師の策にはまり、不穏で切ない夏の気配を堪能し、ちょっとびっくりして読み終わった後での本作。

読み始めてすぐ、あれ?こっちはこういう感じなの?とまた不意をつかれた感じです。

対になる物語なのは確かなのですが、明らかに雰囲気が違う。「七月に流れる城」でゆっくりと明かされた謎は始めから明示されているし、物語はもっと現実的にきびきびと進んでいきます。

素早く、無駄なく、恩田陸氏お得意の側面、ホラー、スリラーの気配がどんどん濃厚になっていきます。

本の厚みは「七月に流れる花」のとほとんど変わらない、つまり薄めの本なので、ひたひたと忍び寄るような薄ら寒い恐怖をまといながら、「七月に流れる花」ではほとんど積み残された終わった謎を次々と回収、一気に収束していきます。

この、バーっと広げてさっと回収していく様もまた、恩田陸氏っぽいなと思える作品です。

それでも、きれいにすべてが解決されて・・・という結末ではありません。突っ込みどころは残しつつ・・・どこか不穏な気配をまとったまま・・・

本当に、どこまでも恩田陸の作品だよなぁ・・・という感じです。

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