アニメ「氷菓」の原作読者による感想・レビュー|評価がめちゃめちゃいい理由が分かった

アニメ

米澤穂信氏原作の「古典部シリーズ」が、京都アニメーション制作で2012年に「氷菓」というタイトルでアニメ化されています。

私は、アニメ化されていて、かなりの高評価を得ていることは知りながら見ることはなく、この度ようやく、2020年になって視聴しました。

で、全部見て、このアニメがどうしてこんなに評価がいいのか、よくよくわかりました。

原作読者から見ても、かなりいい出来だと思います。

古典部シリーズ原作読者、原作ファンから見て、アニメ「氷菓」の感想レビュ―、特にこのアニメの素晴らしい点についてまとめます。

あらすじを書くようなことはしませんが、多少のネタバレが含まれる可能性があるので、原作未読、アニメ未視聴の方はお気を付けください。

原作にとにかく忠実

アニメ「氷菓」は米澤穂信氏の「古典部シリーズ」のアニメ化です。

具体的にいうと、古典部シリーズの中の

という3本の長編と、

という2冊の短編集のに収録されている短編を織り込む形で構成されています。

古典部シリーズを読んでいる原作読者が、まずアニメ「氷菓」を見はじめて思うことは、かなり原作に忠実である、ということです。

部室の場所や、時代設定(原作は2000年、アニメは2012年)の変更はあるものの、登場人物像、関係性、ストーリー展開はほぼほぼ原作の通りです。

ビックリすることに、特徴的なセリフやモノローグなどまでほぼ原作に忠実であり、原作に思い入れのあるファンからしても非常にうれしくなる作りです。

謎解きはしっかりしている

原作作者の米澤穂信氏といえば、青春ミステリーの分野で人気を博したのち、新本格ミステリーの分野へと枠を広げている作家です。

氷菓をはじめとする「古典部シリーズ」は米澤穂信氏の青春ミステリー作品の代表格であり、日常の謎を扱った軽快な作品群ではありますが、ただただ軽いばかりの作品ではなく、登場時人物の心理を掘り下げたものや、ままならない日常のやるせなさも織り込まれている奥深い作品群です。

青春ミステリーで日常の謎を扱い、文体は軽妙、とライトな感じではあるのですが、実はきっちりと伏線が張られ、それが回収されていく展開で、王道のミステリーと言えます。

アニメ「氷菓」は原作にかなり忠実で、さりげない伏線の描写もされており、謎解き者としてはしっかりしています。

下校風景などの描写がいい、強烈なノスタルジー

主人公たちはは高校生。アニメ「氷菓」では、主人公の折木奉太郎をはじめとする古典部4人の、高校1年生の1年間を追うように展開していきます。

1年の間に、大きな3つの事件を解決していきますが、すべては高校生活の中で起きます。

描写される情景は、高校の校舎や登下校のシーン。

柔らかくカーテンが揺れる教室の窓、生徒が点在する図書室、夕日に沈みゆく部室、自転車を引いて歩く川沿いの道、夕方の商店街・・・

どこかで見たような、昔その中を確かに生きていたことがあるような、そんなリアルでたまらなく懐かしい景色ばかりです。

それが京都アニメーションならではの、淡くそれでいて鮮やか繊細な映像美で繰り広げられて、強烈なノスタルジーを感じます

青春時代の悩みの演出が原作よりわかりやすい

アニメ「氷菓」には、ほとんどオリジナルな展開がありません。

全てのシーンは原作にあり、なので原作読者であれば、次のセリフも、セリフの意味も、その後の展開も分かります。

それでもアニメ「氷菓」の完成度がすごいなと思う点のひとつとして、シーンの読解を一歩踏み込んでいる場面が多い、というのがあります。

小説は、当然ながらすべてが文字で描写されるため、理解度は読者の読解力にゆだねられる部分があります。

もちろんそれが小説の楽しみ方ですし、人それぞれの解釈があるのが当然です。

が、ところどころ、この描写はどういう意味なのだろう・・・と掴み切れないまま進む場面もあります。

「古典部シリーズ」も、シリーズが進むごとに、登場人物たちの心理描写、隠しておきたい悩み、葛藤のようなものが描かれていきますが、作者米澤穂信氏は、そのすべてを単純な言葉で説明しきってなどいません。

なので、読者として読解力が足りない部分では、ちょっとよく分からないなというところ、そもそも気付いてもいなかったさりげなく書かれた文章に込められた意味など、取り落としたまま読み進めたシーンがありました。

アニメ「氷菓」では、そういうちょっとわかりにくかった場面について、映像、セリフの口調などの演出を加えることで、解釈をわかりやすく示している部分が多いです。

特に、主要人物「福部里志」については、アニメの解釈にだいぶ助けられたところがあります。

アニメ「氷菓」の演出がすべて正解、ということではなく、一つの解釈として示されたことで、作品の理解が深まった部分が確かにあります。

主人公の緩やかな変化がいい

主人公の折木奉太郎は、超省エネ主義を掲げ、「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」をモットーに生きる、地味というかやや無気力な高校生。

その奉太郎が、古典部のメンバー、主に千反田えるに引きずられるようにして、少しずつ少しずつ変わっていく様が丁寧に描かれています。

奉太郎自身は性格が格別悪いわけでもなく、誰とも深く関わらないことにさほど不自由は感じてなさそうですが、やはり、人は人と関わっていくことで変わっていく。

その変化が、影響が特に大きいにも青春時代特有と思います。

周囲が奉太郎に影響を与える、奉太郎も実は周囲に影響を与えている。そんな高校時代が、わざとらしくない程度の緩やかさで描かれていくのがいいです。

終盤の恋愛心理描写が傑作

「古典部シリーズ」の主要人物は4人。

  • 折木奉太郎(主人公)
  • 千反田える(ヒロイン)
  • 福部里志
  • 伊原摩耶花

特殊能力を持っていたり、非常な不幸を背負っていたりなどということはない、地方都市の普通の高校生の物語です。

この4人の物語初めの人間関係は

  • 折木奉太郎、福部里志、伊原摩耶花は同じ中学出身
  • 折木奉太郎と福部里志は中学時代からの親友
  • 中学時代から、伊原摩耶花は福部里志に片思い

この状況に千反田えるが加わり、高校1年生という1年間を過ごす中で、彼らの関係性も緩やかに変化していきます。

「古典部シリーズ」はあくまで青春ミステリー作品で、恋愛を主体においた物語ではないのですが、そもそも伊原摩耶花は福部里志に強烈に片思いしていますし、物語が進むにしたがって彼らの恋愛感情も変わっていきます。

アニメ「氷菓」では、恋愛的な要素が前面に出てくるのはシリーズの後半、20話頃からですが、この恋愛心理描写は必見です。

初々しく、痛々しく、青春時代ならではともいえる清冽さは、大人になってから見るとまぶしく、やはり懐かしいです。

今見ても全然古くない

アニメ「氷菓」が放映されたのは2012年。

私が見たのは2020年9月で、実に8年も前の作品にはなるのですが、古いという印象はほとんどなかったです。

もちろん、2012年当時はスマホは普及していないので、高校生である登場人物たちは携帯を持っていない子いるし、持っているとしても二つ折りのガラケー。

時代を感じる描写はあるのですが、京都アニメーションが手掛けた絵、映像は全く古びた感じを受けませんでした。

公開から8年経った今見ても、白けることなくハマれます。

アニメ「氷菓」は時を超えて愛されるべき名作です

原作ものの映像化は難しい、と思います。原作が漫画であっても、小説であっても。

原作ファンからすると、世界観が壊れたという評価が出る可能性がどうしても高いからです。

その点アニメ「氷菓」は、あくまで原作に忠実、できるだけ忠実であろうという姿勢が作品全体を通して強く伝わってくるので、原作読者からも愛されるはずです。

あらに、アニメ「氷菓」は、原作へのリスペクトはそのままに、、原作では書ききれなかったというか、想像しきれなかった登場人物たちの心理について、アニメという手法でさらに分かりやすく演出することに成功しています。

原作もののアニメ化で、原作の良さを引き立てながらさらに完成に近づいたという稀有な例ではないでしょうか。

特に、福部里志という、主人公の親友のやや屈折した心理描写については秀逸で、身に迫るものがあります。

2012年を生きる主人公たちは高校1年生ですが携帯を持っていなかったり、ガラケーだったりと小道具については時代を少し時代を感じますが、絵は全然古びていないし、今見ても全く問題ないです。

むしろ、私のような、すでに大人になってしまった存在が見た場合には、当時のことをまざまざと思い起こすようで非常に懐かしく、切なく、いとおしいのです。

アニメ「氷菓」が放送されてから8年ですが、今からでも、見る価値がある傑作アニメだったと改めて感じました。やたらと評価が高いのもうなずけます。

アニメ「氷菓」は、主人公たちの高校1年生が終わって春休み、までが描かれていますが、原作シリーズは高校2年の彼らが活躍しています。

奉太郎、える、里志、摩耶花のその後が気になる方は、ぜひ原作シリーズを読んでください。

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